2,ターゲットの違いによる配り方・売り方の違い
自費出版で本を作る際に、読者をどこに求めるかによって本の配り方や売り方が変わってきます。
本を書いている時点で、その思いを誰に伝えたいかというターゲット(見込みの読者層)がすでに著者の心の中にあるはずです。
以下の3つのケースを考えながら本の流通(=配り方や売り方)を考えてみましょう。
(1)家族や親戚・友人たちに「思い」を伝えたいケース。
自分の歩んできた人生のことや自分のルーツのことなどを書き著した「自叙伝」などがこれにあたるでしょう。
(2)自分の住むまちの人たちと「思い」を共有したいケース。
自分の住むまちの歴史や文化に関すること、まちの四季を撮った写真集、地域の偉人・先人達の業績をまとめた資料などがこれにあたるでしょう。
(3)日本全国の人たちにできるだけ広く紹介したいケース。
随筆や小説、詩集、宗教や哲学・思想に関する本などはこれにあたるでしょう。
まず、(1)の場合の流通の仕方を考えてみましょう。
家族や親戚・友人たちに「思い」を伝えたいという目的での自費出版ですから、通常制作部数は100部から数百部でしょう。
本の配り方も、ごく近い人には直接献本するとか、封書に添書を入れて献本するなどして配る場合がほとんどです。
もし友人・知人たちが「出版記念会」を開催してくれるという運びになれば、
会の当日に参加者の皆さんにお配りすればいいでしょう。
本を売って、少しでも出版経費を回収したいと考えるのであれば、
会費の中に本代を含めればいいでしょう。実行委員の皆さんと相談しながら進めましょう。
もちろん本代は参加者から頂かず、著者から参加者への贈呈ということで参加者からは会費だけ頂くケースもあります。
(1)のケースの場合には、ごく身近な方に読んで(見て)頂きたいという気持ちで出版するので、ISBNコード番号の取得は必要ありません。
次ぎに、(2)自分の住むまちの人たちと「思い」を共有したいというケースの、
本の流通と販売方法について考えてみましょう。
「自分の住むまち」を、全県で考えるのか、全市で考えるのかによっても違ってきますが、
■まずは自分の住む市や町単位で考えてみましょう。
ご自分の住む市や町には何軒かの本屋さんがあると思います。
その本屋さんに行って、半年、あるいは1年くらいを条件に本を置いてもらう交渉をしてみましょう。
これはきっとそんなに難しいことではないでしょう。
置いてもらう期間だけではなく、「掛け率」もしっかりと取り決めておく必要があります。
本屋さんは通常「出版取次」経由で本を仕入れていますが、せいぜい20%前後の利益ですので、
25〜30%の掛け率にすると、本屋さんにとっても利幅の大きな商材という事になって、
ポップを書いていい場所に置いてくれたりして、一所懸命売ってもらえる可能性があります。
地元の本屋さんにおいてもらうと同時に、FacebookやLINE、TwitterなどのSNSを使って友人に情報を周知したり、
地元の新聞社に売り込んで掲載してもらうなどしてみましょう。
この場合にも出版記念会を企画してもらえると、ある程度の本は売ったり配ったりすることができますし、
出版記念会の記事を地元紙に掲載してもらうことも可能でしょう。
このケースの場合、何部位の部数を作るかは、まちの大きさや本の内容によっても異なりますが、
大事なのは、本屋さんで売ってもらえる期間が限られていると言うことです。
本屋さんに置いてもらえる期間中に、8割方を売ってしまうつもりで販売計画を立てましょう。
時間が経てば経つほど、本は売りにくくなると考えてください。
※「いわてイーハトーヴ書店」が皆様のお役に立つのは、一般書店とは違い、本を置く期間に制限がないことです。
「いわてイーハトーヴ書店」のホームページ上ではいつでも本の内容を詳しく見ることができますので、
著作者は「いわてイーハトーヴ書店」を友人・知人に紹介し、自分の著作物の内容を見るよう促すだけです。
それから注意点がもう一つ。
(1)のケースも同様ですが、作った本全部を売り切らずに10冊から20冊位は必ず手元に残しておきましょう。
本というのは、時間が経ってから欲しいという人が現れたり、将来自分の名刺代わりに本を差し上げたくなる場合が出てくるものです。
自分のまだ見ぬ子や孫への大切なプレゼントととしても保管しておきたいものです。
■次ぎに、岩手県全県で売る場合を考えてみましょう。
この場合も基本は前段と同じで、自分の知り合いの本屋さんに直に販売を頼んでみるというのが一番効果的ですが、
さすがに全県に本を頼んで歩くのは大変です。
岩手県全県で配本を考える場合には、岩手県全県に配本してくれる「出版取次」業者に頼むのが賢明です。
通常は個人で出版取次業者に持ち込むことはありませんので、イー・ピックスのような出版社経由で頼むことになりますが、
その際にはイー・ピックスと取次業者への手数料が掛かります。手数料は合わせて45%強になります。
全県での配本を考えた場合にはそれだけでも300冊から400冊は必要になりますので、
ご自分の献本分なども含めると500冊以上は印刷する必要があります。
そして、当然ですがこの場合にはISBNコード番号を付ける事が必要になり、
「売上スリップ」と呼ばれる売上票も印刷し本に付ける必要があります。
さて最後は、(3)全国のできるだけ多くの人たちに自分の「思い」や「感性」を届けたいという場合です。
この場合には全国に配本できる「出版取次」に頼むことが必要になりますが、
個人で取次業者に頼むことはできませんので、出版社経由になり、出版社と取次業者に手数料が掛かります。
この手数料はおおむね35〜45%掛かります。
35〜45%の手数料と聞くとびっくりしますが、この中には本の配送料も入りますのでやむを得ません。
(2)の場合でも(3)の場合でも同じですが収支を考える場合は、この手数料を頭に入れて本の販売価格の設定をすることが大事です。
これは別のところで説明しますが、印刷部数が多くなればなるほど1冊単価が小さくなりますので、
本の制作費をしっかりと回収しようとする場合には、ある程度の部数を制作し、1冊単価を低く抑え、
35〜45%の手数料を取られても手元に利益が残るような販売計画が必要になります。
日本全国に本を流通しようと思うと、初版3000部は印刷したいところです。
さて、(1)→(2)→(3)に従って印刷する数量は当然大きくなりますが、
ここで注意しなければならないのは「返本」のリスクも又大きくなるということです。
出版取次経由で本を全国に配本してもらうということは、
あくまでも「委託」で全国においてもらうという事であり、「買い取り」ではありません。
半年後に返本の山にうなされてしまうというリスクもあるのです。
以上、3つのパターンで本の流通を見てきましたが、本をたくさん作ればつくるほど本の販売計画や利益計画が大切になってきますので、
その考え方を実例をあげながら簡単に説明してみます。
→「本の販売計画や利益計画」を考える
→とりあえずイーハトーヴ書店で本を売ってみたい
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