著者:泉桂子・伊藤英之・宇佐美誠史・窪孝治・渋谷晃太郎・島田直明・鈴木正貴・豊島正幸・新田義修・平塚明・見市建・山本健・吉木岳哉
連携パートナー:岩泉町・小本地域振興協議会
取材・撮影・構成:高橋正也
アートディレクション:村上由美子(デザインランド)
デザイン:光安 勲
プロデューサー:佐々木倫彦
発売年: 2014年
判型:B5判変形(127×188)
並製本・カラーカバー付・200頁
編集:岩手県立大学総合政策学部(代表 豊島正幸)
発行:イー・ピックス
ISBN978-4-901602-56-3
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<店主おすすめのポイント>
「風土」という美しい日本語がある。そして「風の人、土の人」ということばを聞いたことがある。「風の人」とは「外から来た人」という意味であろうし、「土の人」とは「地元で生まれ育った人」という意味なのだと思う。
人はみな、風の人であれ、土の人であれ、みなその風土の中で育まれ成長し、その風土に関わり、あらたな風土を作り上げ次世代に引き継いでゆくという営みをしてきたのだと思う。
この本は、その「まえがき」にあるように、風土の中の「景観」という切り口から、身近な風土に迫ろうとする新鮮な取り組みをした本である。身近なものに迫ろうとする作業は思いの外大変だ。「東日本大震災」という出来事がその大変なことをさせてくれる力になったのだと思う。
まずは、三陸沿岸に住む人たちに読んでみてほしい本だ。
今私たちが住んでいるこの三陸の地が,まるで天国のような素晴らしい風土だと少しでも感じてもらえたら嬉しいし、その風土は何千年にもわたり、先祖たちが少しずつ少しずつ変えてきたのだという事も感じてもらえたら嬉しい。
<はじめに>より
今、「地元を知る」運動に、あらたなうねりを感じる。それは、単に以前の運動の延長線上にあるものではない。契機は、2011年3月11日の東日本大震災である。
復興支援などで被災地に入った、いわゆる「よそ者」たちとの語らいや交流は地元住民の「気づき」を引き出した。あらたな推進力が住民たちの内部から湧き上がってきたかに見える。こうした「地元を知る」運動が向かう先は一体何処であろうか。
これからの地域の姿をどう描くのか。この問いが、津波で被災した地域のみならず、わが国全体に突きつけられている。そのとき、まず拠り所とするのは、地域の歩みである。(中略)
私たちが注目したのは「景観」である。日々目にしている景観には、過去の人々の営みが幾重にも重ね合わされている。既存のアーカイブ資料や過去の地図類も活用しながら、最新の学問成果に基づいて読み解くならば、土地に根ざした新しい「物語」が生まれてくるであろう。この「物語」こそ、これからの時代を考える土台であり、次世代とともに共有してゆくべき地元の「風土」そのものである。
身近な存在である「景観」を材料に、その奥に潜む自らの風土を探っていく試みが、本書「いわて地誌アーカイブ」である。「景観」を読み解くには、自然現象から人文現象に至るまで多様な専門分野の力が必要である。本学部が、この企画を立ち上げた理由はそこにある。
「景観」は自らの風土を探る入り口であると同時に、地元住民がこれからもその在り方に関わっていくべき対象である。そこにはやがて深い語らいの場も生まれてこよう。「景観」には、人々をつないでくれるという効能がある。
この取り組みを、岩泉町小本から始めたいと思う。