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三面椿
〜ヤブツバキと産金をテーマにした天平のロマン小説〜

著者:柄戸 正(カラト タダシ)
発行所:イー・ピックス
発行年:2022年3月19日
判型:四六判
頁数:160頁
並製本・カラーカバー、帯付
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大船渡市が位置する岩手県沿岸南部は、リアス海岸が広がり目の前は黒潮と親潮がせめぎ合う世界三大漁場といわれるところだが、暖流の影響か冬でも雪が少なく温暖で、一帯にはヤブツバキが自生しており、ヤブツバキの北限ともいわれている地方である。

この物語の舞台は、奈良に大仏が建立されようとしていた天平十六年にまで遡る。
大仏の鍍金には大量の金が必要だが、その当時日本では金がとれないとされていた。
そのため、宮城県涌谷で初めて金が発見されたことは大変な慶事とされ、当時の天皇・聖武天皇は年号を天平感宝とするほど喜んだという。大伴家持はこの慶事を「天皇(すめろき)の御代栄えむと東なるみちのくの山に金(くがね)花咲く」と歌に詠んだのは有名である。

以来東北各地で金が産出されたが、特にも岩手県大船渡市を中心とした気仙地方は、昭和18年まで産金が続けられるほどに埋蔵量が豊かで、16世紀までは世界最大級の産金量があったとされるほどであった。これらの金はその後、平泉の中尊寺金色堂に象徴される奥州藤原文化の全盛期を支えたとされている。

この物語は、奈良の大仏の鍍金に使う産金を求め紫香楽に住む青年・築麻呂(つきまろ)がみちのくの産金を求めて奥州へ、そして気仙の熊野神社に来る物語であるが、途中大地震による大波で海に落ち、伊豆大島に流れ着くことから物語がはじまる。

大船渡に現存する日本最大最古とされるヤブツバキと日本で最大級の産金を誇った気仙の産金を二つの縦糸にした、壮大な歴史ロマンである。

<著者プロフィール>
1949年 東京生まれ
1971〜73年 西ドイツシュツットガルト大学留学
1976年 早稲田大学理工学部修士課程卒業(建築) 清水建設入社
1991年 シミズドイツ(ジュッセルドルフ)社長
2001年 シミズヨーロッパ(ロンドン)社長
2011年 清水建設退社

<著者作品>
訳書/『対馬 日本海海鮮とバルチック艦隊』2011年
著書/『安永の椿』2012年
   『ガリヴァーの訪れた国』2014年
   『雲南の流罪僧』2018年

<帯の推薦文>
柄戸さんは己の道をひたむきに生きる人の姿を描く。日本の椿をヨーロッパにもたらした物語「安永の椿」には、嘆くことも諦めることもせず、海を渡って進み続ける男がいた。その静かな情熱が胸を打った。
今作は奈良時代の日本が舞台。奈良で始まる物語は、伊豆大島を経て大船渡へ辿り着く。疫病、飢饉、戦乱、災害が続いた時代に大仏造立や寺の建立に尽くし、懸命に生きた人々がいたことを老椿は教えてくれるだろう。
木全 典子(日本ツバキ協会理事・国際ツバキ協会日本代表)

<著者より一言>
歴史の深淵をのぞき見る不思議
岩手県大船渡市末崎(まっさき)町の熊野神社に今も咲く「三面椿」と呼ばれる椿は、樹齢千数百年の日本最古といわれる椿の木である。この物語を書き進めるうちに、万葉集にある大伴家持の金が出たことをことほぐ歌にたどり着き、陸奥国に伝わる黄金伝説を知ることとなった。大船渡市がある気仙地方一帯が実はかつての一大産金地帯であり、奈良の大仏の鍍金との関連から、それ以降の日本の歴史のばらばらであった出来事が金の輝きのもとに収斂するような気がし、歴史の深淵をのぞき見る不思議を味わったのは言うまでもない。 (本書帯より)