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吉浜のつなみいし


企画・制作:吉浜教えの里プロジェクト
文・絵:小松則也
英 訳:Peter Frumkin
英訳協力:青野美穂
出版社:イー・ピックス
発行年:2015年
判型:B5判変形(210mm×182mm)
並製本・64頁
ISBN978-4-901602-57-0
※この商品は、別途税別送料270円がかかります

東日本大震災では「奇跡の村」と言われ、ほとんど被害を受けなかった岩手県大船渡市吉浜。その理由は、明治の大津波で大きな被害を受けた先人たちが高台移転をしていたおかげでした。
昭和の大津波の際に打ち上げられた津波石を題材にして、災害を忘れず次世代に継承する事の大切さを、子どもから大人まで分かりやすく編集した本です。
BCP(事業継続計画)の観点でも格好のテキストとして活用できます。
2022年、篤志家の寄付で重版が叶いました。





 





<店主のおすすめポイント>
三陸の沿岸はどの町も有史以来大津波の被害を被ってきました。何度か津波の講演を聞いたことがあるのですが、「岩手県は世界で最も津波エネルギーを受けた地域」だと言っていました。
岩手県大船渡市三陸町吉浜(よしはま)もその例にもれません。吉浜は明治29年の「明治三陸大津波」で村の2割の人が亡くなりました。そのときの村長さんのリーダーシップで村ごと高台移転し、その後の昭和8年の「昭和三陸大津波」と東日本大震災では他の三陸のどの町よりも被害が少なくて済みました。
そんな吉浜では、昭和8年の大津波の時、沖合から大きな岩が流れ着き海岸付近に置かれてありましたが、町民も気がつかないうちに、道路工事のために土中に埋められてしまいました。
そして東日本大震災が起きました。この日の朝、いつもの散歩仲間3人が散歩しながら「そういえば、昔、この辺りに大きな津波石があったがなぁ」{石の上に上がって,よく遊んだもんだなぁ」「なあに、大津波でも来れば土が流されてひょっこり出てくるんでないべか」と話していたところが、なんとその日の午後に大津波が来て昭和の津波石の頭が土から顔を出していたという、物語のような本当の話です。
「みんなの震災学習テキスト」と付けられているように、この本は震災学習テキストとして様々な使い方ができるように工夫されています。
有史以来何度も津波被害を受けている吉浜でさえも、町民の意識が低く津波石を土中に埋めてしまったその戒めを、絵本という形で何とか残したいと、吉浜生まれの絵本作家が作った絵本が『吉浜のつなみ石』という本です。そしてその本に英訳を付け、吉浜の過去の津波被害の資料を様々に付け、多くの世代に読み継がれるよう工夫されています。

<まえがきより>
吉浜発「つなげよう先人の教えを未来へ」 
さくらのペイントをまとった「キットずっと号」は、2013年4月からよく年4月まで、夢を叶えるイベント列車として一年間、三陸鉄道南リアス線を走りました。この車両(キハ36形−105型)は、東日本大震災の時に釜石に向かう途中でした。ちょうど吉浜にあるトンネル内を走行していて、間一髪で地震と津波からのがれることができた「きせきの車両」です。そして、お客さんの命も運転手さんの知恵と勇気によって守られました。その後、何よりも人を思うやさしい気持ち。3.11の大災害から立ち上がろうとするみんなの心が一つになり、この列車は、「キットずっと号」として復活したのです。
 実は、もう一つの奇跡が“吉浜”にはありました。吉浜地区は、東日本大震災では、被害が極めて小さかったばかりでなく、その歴史的ないきさつから「奇跡の集落」と呼ばれました。このことは、単なる偶然ではなく、先人が明治・昭和の二度の大津波から学び、一丸となって高台移転を進めてきた結果です。吉浜の人々は、高いところに家を建て、遠い道のりを、あたり前と思い漁に出かけました。そして、低い土地は、田や畑として利用してきたのです。つまり、先人の教えを今日までしっかりと守り生活してきたからこそ、津波の被害を小さくすることができたのです。
「百年以上にわたり津波と向き合ってきた吉浜の人々の足跡をずっと未来につなげていきたい」という願いから“震災学習テキスト”は誕生しました。 今度の「キットずっと号」のゆく先は未来です。運転手はあなた自身です。真っ白な旅行計画書に、あなた自身の旅のプランを自由にえがいてください。そして、大切な家族や友人を乗せ、本当に安心安全で楽しい未来の旅にどうぞお出かけ下さい。このテキストがあなたの旅のハンドブックになれば、とても嬉しいです。3つ目の奇跡を起こすのは、今度はあなたです。♪「キット夢はかなうから」、吉浜から「つなげよう先人の教えを未来へ」♪

<内容紹介>
この本の前段は絵本「吉浜のつなみ石」になっています。
この絵本は、東日本大震災の大津波で、地中に埋められていた「昭和の津波石」が、古老たちが噂をしたその日の午後に襲ってきた平成の大津波でふたたび地上に姿を現したという不思議な実話に基づいたお話しです。
さまざまな教訓を含み、年齢に関係なく、わかりやすく描かれています。英文も付いているので英語圏の方々にも読み聞かせができます。
中段では、明治の大津波での被害を教訓に高台移転を地域ぐるみで行ってきた大船渡市三陸町吉浜地区の取り組みを多角的に掲載。今後日本中で予想されるさまざまな災害へ備えるヒントにしてほしいとの思いで構成しました。
後段では、東日本大震災で大きなダメージを受け、再建は困難と思われた三陸鉄道の復興までの道のりを紹介。大きな災害に遭ってしまったときでも、地域とともに励まし合い助け合う事の大切さを教えてくれます。
本文64ページながら、大船渡市三陸町吉浜地区にスポットを当て、幼児から大人まで読みごたえのある「震災学習テキスト」です。

次世代に津波の恐ろしさを引き継ぐことの大切さを訴えることと、今生きる私たちが来たるべき災害に備えどのようなことができるのかを多くの人で考える際のテキストとして使ってもらえば有用です。幼児や小学生には、「防災思想の入門書」や「読み聞かせ教材」として…、
そして、災害に強い地域づくりに取り組む、自治体関係者・学校関係者・地域住民、そして「BCP(事業継続計画)」に取り組む企業には、貴重な実例としてお役に立つものと思います。

<目次>
●絵本『吉浜のつなみ石』・・・作・絵/小松 則也
「つなみ石の絵本」ができるまで・・・小松 則也
「津波石」との出合い・・・枛木澤 正雄
●三陸町「吉浜」と津波の歴史
  吉浜 奇跡の集落
  コラム1-ビスカイノと慶長の大津波
  航空写真で見る吉浜地区の浸水の様子
  昭和三陸津波回想
  コラム2-三陸地方震災復旧資金
●つなげよう未来へー次代へつなぐ吉浜の取り組み
  吉浜小・中学校の取り組み
  「よしはま元気組」の取り組み
  『その時私は・・・』の発刊にあたって・・・東 堅一
  記録集『その時私は・・・』より 間一髪の脱出
  コラム3-三陸町綾里の津波博士 山下文男さん
●「地域の足・三陸鉄道」奇跡の復活から学ぶ
  いつも地域とともに、三陸鉄道の使命
●吉浜駅周辺お散歩マップ
●テキスト発刊の“あいさつ”にかえて

<著者プロフィール>
●企画制作/吉浜教えの里プロジェクト
 岩手県大船渡市三陸町吉浜地区の地域づくり団体。明治以来地域に根付く防災思想や地域づくりの伝統を、次世代につなぐ活動を通して、地域の活性化を図る活動を展開している。

●文・絵/小松則也
 岩手大学教育学研究科修了。大船渡市立立根(たっこん)小学校教諭。東日本大震災をきっかけに、震災絵本を制作。
 絵本を活用し防災教育を行っている。また、地域においては「吉浜教えの里プロジェクト」を立ち上げ、町おこしの活動を積極的に行っている。
 著書には他に『ふろしきづづみ』(ツーワンライフ)、『浜の命』(ツーワンライフ)がある。


文と絵を描いた小松則也先生

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