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ヒタカミ黄金伝説

震災時に水で濡れた被災本になります。
もう本自体が20数点程しかない貴重な本です。


著者:山浦玄嗣
出版社:共和印刷企画センター
発行年:1991年
判型:四六判(127mm×188mm)
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<店主おすすめのポイント>
 1992年。この年はコロンブスがアメリカ大陸と遭遇して500年目の記念の年で、世界中で様々な行事が行われた。コロンブスの子孫が日本を訪れ、記念行事への協力を要請し、日本政府もそれに応え「サンタ・マリア号協会」が設立され、瀬島龍三氏が会長に就いた。
 この協会の最も大きな目標は、「復元船のサンタ・マリア号」をバルセロナで建造し、500年前に果たせなかったコロンブスの夢、即ち「黄金の国ジパング」への冒険航海を復元船で果たすことであった。
 この事業の概要を知った岩手県気仙(けせん)地方の医師でもあり郷土史家の山浦玄嗣氏は、「黄金の国ジパング」とは、日本に金閣寺などまだ建てられていなかった時代、中尊寺金色堂に代表される、東北平泉を中心とする一大産金地帯のことであり、その中でも抜きんでた産金量を誇った気仙地方(岩手県大船渡市・陸前高田市・住田町)こそが黄金の国ジパングの中心にあたると訴えた。
 この考えの論拠を様々な歴史的資料を基に、歴史に詳しくない人々でもわかりやすく小説に仕立てたのが本書『ヒタカミ黄金伝説』である。この本は単に気仙地方の文化や歴史にとどまらず、東北蝦夷族の文化歴史を知る上でも格好の書物である。山浦氏の東北蝦夷族に対する識見は後に『ホルケウ英雄伝(上・下巻)』(2017年、KADOKAWA)としても出版されることになる。

追記
この本を出版した共和印刷は東日本大震災で被災し、社長夫妻は津波の犠牲となってしまった。
震災後1ヶ月もした頃だったろうか、共和印刷の2階の片隅から津波を被ったこの本が100冊以上も発見された。社長夫妻も亡くなられ、この本は著者の山浦玄嗣さんの手に渡ったのだが、山浦さんはこの本をイー・ピックス社に託された。イー・ピックス社の倉庫も別の場所で被災したのだが、2万冊もの本の中で形をとどめて発見されたのは『ケセン語訳新約聖書』と気仙の産金を取材した『イラムトゥイパ』だけであった。
ジパング伝説は、遙か海を越え大陸を越えてヨーロッパに渡り、コロンブスのアメリカ大陸との遭遇をもたらしたのだが、この度の震災でも、その産金ストーリーを記した貴重な2冊の本が津波をくぐり抜けて生き残ったことに不思議な感動を覚える。


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