「本の販売計画や収支計画」を考える(その2)
上記の本の制作費は1000部で120万円(税別)、チラシの制作費は2000枚で3万8千円(税別)の
合計123万8千円(税込みで約134万円)でした。
収支計画をどのように考えるか、この本の場合を参考に以下に書いてみましょう。
考え方の基本は、
(1)本の販売で利益を出したい、と考える場合…
(2)かかった経費をある程度回収できれば利益を上げなくても良い、と考える場合…
この2つの内どちらのスタンスで望むのかにより、計画の立て方は違ってきますが、
地方で自費出版を志す多くの場合、
「自腹で出版するが、できることなら掛かった経費を少しでも回収し、
次の本を出す資金を確保できれば有り難い…」という考えで出版することが多いようです。
この本の著作者の場合にも同様でしたので、
134万円の経費を、1000冊の本の販売でいかに回収できるかという計画を以下で考えてみます。
本の「売価設定」が大事
先ず大切なのは本の売価の設定です。
この本の場合は1000部印刷しましたので、
売価を税込み1,620円(1,500円+8%の消費税)にすると、
1,620円×1000部=1,620,000円の収入になり、1,620,000円ー1,340,000円=280,000円のプラスになり
売価を税込み2,160円(2,000円+8%の消費税)にすると、
2,160円×1000部=2,160,000円となり、2,160,000円ー1,340,000円=820,000円のプラスになります。
「ワーッ 結構利益が出る!」
と思いがちですが、ここで落ち着いて考えてみましょう。
ここまでの計算は、あくまで「1000冊全部」を、「定価」で「自分が全て」販売した場合の計算になります。
しかし実際には(その1)でも書いたように、近所の書店に掛け率70〜75%で委託販売をお願いしたり、
出版取次にお願いして県内の書店に委託販売をお願いしたりして販売します。
この場合の掛け率は55%位になります。(「いわてイーハトーヴ書店」で自分の本を売りたい方へ その2 参照)
さらには1000冊全てを売るわけではなくこのうち20冊は保存用に手元に置き、
30冊を友人・知人に献本すると考えると、実際に販売できるのは950冊ということになります。
そこで、この本の場合は次の3プランで試算を立ててみました。
Aプラン→売価を税込み1,620円(税別1,500円)に設定
※税別で1,500円という価格は、実際のところビジネス書などでも最も良く売れる金額といわれ、これ以上になると販売数が落ちる傾向があります。
Bプラン→売価を税込み1,944円(税別1,800円)に設定
※全国流通するビジネス書のように大量の部数をつくるわけではない地方出版では、税別で1,500円では採算を合わせるのには無理があります。そこで税別1,800円で採算を考えてみます。
Cプラン→売価を税込み2,160円に設定
※税別2,000円は少し高い印象になりますが、本の内容なども考慮し、友人・知人を主な購買層と考えるとギリギリの金額と考えました。消費税は切り捨てて売ることも視野に入れています。
Aプラン <売価が税込み1620円の時>
(注1)図書館流通センター(TRC)は全国の学校や公共図書館に新刊を配本している会社です。図書館に納入する図書の8割の納入実績があるとも言われています。イーハトーヴ書店の運営母体のイー・ピックス社はTRCに口座を持っており、TRCを通して全国の図書館に販売する事ができます。(実際の納入数は、本の内容によりTRCが決定するため、より魅力的な本を作ることが大切になります)
(注2)ここでは「手元保管分」として、20冊にしていますが、3と4の取次業者からは返本が予想されますので、ここではそれぞれ50冊返本され、最終的に著作者の手元に戻ります。したがって、手元保管分は最終的に120冊となります。(この分は、いわてイーハトーヴ書店で根気よく販売が可能です)
Bプラン <売価が税込み1,944円の時>
(注1)ここでは「手元保管分・在庫」として、170冊にしていますが、20冊は著作者が自分の保管分。残りの150冊は、実際には県内の出版取次と全国の出版取次に多めに配本し、返本を見越した分です。
Cプラン <売価が税込み2,160円の時>
(注1)ここでは「手元保管分・在庫」として、220冊にしていますが、20冊は著作者が自分の保管分。残りの200冊は、実際には県内の出版取次と全国の出版取次に多めに配本し、返本を見越した分です。
自費出版の場合には、著作者の人脈や販売力が基本
上記の3つのパターンは、
1,定価を、1,620円・1,944円・2,160円の3通り
2,著作者個人の販売数を、400冊・350冊・300冊の3通り
で試算したものです。
※手元保管分・在庫の冊数も変わっていますが、これは注記でも説明しているように、実際には県内取次と全国取次に多めに配本し、売れ残って返本になった数です。
自費出版であれ企画出版であれ販売数は水もので、予測はつきませんので著作者の人脈や販売力が最も大切になります。
ですから、著作者が手堅く販売できる数を基本に考え、それに販売単価を掛けた金額をベースに考えるべきです。
そのように考えると、本の販売単価も自ずと考え方が固まってきます。
著作者の知人や・友人が見込み客の大半だと考えると、その人達にいくらであれば買ってもらいやすいか、という観点で考えてみましょう。
この本の場合には、当初、著作者は税別1,800円(税込み1,944)を考えていました。
しかし、税別1,800円の本を買ってくれる友人達であれば、税別2,000円でも買ってくれるに違いないと考え、パターンCも考えてみたのですが、税別2,000円という金額は税込みだと2,160円になり、実際に本を売ってお金の授受をするときに釣り銭が面倒になります。かといって160円は切り捨てるには大きな金額で、安売りの感が出てしまいます。
そこで結果的には定価を税別1,900円(税込み2,052円)に決定しました。これなら、実際の販売の時は52円を切り捨てて値引きして売ると、販売しやすいからです。
このように定価を決めて、著作者自身の販売数も手堅く300冊で計算してみました。
以下が最終的な販売のシミュレーションです。
最終プラン <売価が税込み2,052円の時>
このように最終プランでは、著作者の販売冊数を300冊、売上金額を615,600円と見込み、
その他の売上も無理のない冊数で計算し、合計で123万円の売上の計画にしました。
かかった経費にはわずかに足りませんが、ほとんど回収できる計算です。そしてこの計算では最終的に220冊(750冊から献本分の30冊を引いた数)の本が手元に残る計算になります。
これは販売率が78%ですが、出版事業としては十分な販売率になります。
残った本のうち20冊は子や孫のための永久保存版として保存しておき、残りの本はいわてイーハトーヴ書店でコツコツと売ったり、名刺代わりに知己を得た人に差し上げたりと、有効に使えばいいわけです。
※この記事は2018年8月19日現在書きかけです
上記の本の制作費は1000部で120万円(税別)、チラシの制作費は2000枚で3万8千円(税別)の
合計123万8千円(税込みで約134万円)でした。
収支計画をどのように考えるか、この本の場合を参考に以下に書いてみましょう。
考え方の基本は、
(1)本の販売で利益を出したい、と考える場合…
(2)かかった経費をある程度回収できれば利益を上げなくても良い、と考える場合…
この2つの内どちらのスタンスで望むのかにより、計画の立て方は違ってきますが、
地方で自費出版を志す多くの場合、
「自腹で出版するが、できることなら掛かった経費を少しでも回収し、
次の本を出す資金を確保できれば有り難い…」という考えで出版することが多いようです。
この本の著作者の場合にも同様でしたので、
134万円の経費を、1000冊の本の販売でいかに回収できるかという計画を以下で考えてみます。
本の「売価設定」が大事
先ず大切なのは本の売価の設定です。
この本の場合は1000部印刷しましたので、
売価を税込み1,620円(1,500円+8%の消費税)にすると、
1,620円×1000部=1,620,000円の収入になり、1,620,000円ー1,340,000円=280,000円のプラスになり
売価を税込み2,160円(2,000円+8%の消費税)にすると、
2,160円×1000部=2,160,000円となり、2,160,000円ー1,340,000円=820,000円のプラスになります。
「ワーッ 結構利益が出る!」
と思いがちですが、ここで落ち着いて考えてみましょう。
ここまでの計算は、あくまで「1000冊全部」を、「定価」で「自分が全て」販売した場合の計算になります。
しかし実際には(その1)でも書いたように、近所の書店に掛け率70〜75%で委託販売をお願いしたり、
出版取次にお願いして県内の書店に委託販売をお願いしたりして販売します。
この場合の掛け率は55%位になります。(「いわてイーハトーヴ書店」で自分の本を売りたい方へ その2 参照)
さらには1000冊全てを売るわけではなくこのうち20冊は保存用に手元に置き、
30冊を友人・知人に献本すると考えると、実際に販売できるのは950冊ということになります。
そこで、この本の場合は次の3プランで試算を立ててみました。
Aプラン→売価を税込み1,620円(税別1,500円)に設定
※税別で1,500円という価格は、実際のところビジネス書などでも最も良く売れる金額といわれ、これ以上になると販売数が落ちる傾向があります。
Bプラン→売価を税込み1,944円(税別1,800円)に設定
※全国流通するビジネス書のように大量の部数をつくるわけではない地方出版では、税別で1,500円では採算を合わせるのには無理があります。そこで税別1,800円で採算を考えてみます。
Cプラン→売価を税込み2,160円に設定
※税別2,000円は少し高い印象になりますが、本の内容なども考慮し、友人・知人を主な購買層と考えるとギリギリの金額と考えました。消費税は切り捨てて売ることも視野に入れています。
Aプラン <売価が税込み1620円の時>
販売ルート | 販売実数 | 単価 | 掛け率 | 売上金額 |
1,個人での販売 | 400冊 | 1,620円 | 1.00 | 648,000円 |
2,イーハトーヴ書店での販売 | 50冊 | 1,620円 | 0.80 | 64,800円 |
3,県内の取次へ委託(配本数250冊) | 200冊 | 1,620円 | 0.55 | 178,200円 |
4,全国の取次へ委託(配本数200冊) | 150冊 | 1,620円 | 0.60 | 145,800円 |
5,図書館流通センター(注1) | 50冊 | 1,620円 | 0.58 | 46,980円 |
6,手元保管分(注2) | 20冊 | 0円 | 0円 | |
7,献本分 | 30冊 | 0円 | 0円 | |
合 計 | 900冊 | 1,083,780円 |
(注1)図書館流通センター(TRC)は全国の学校や公共図書館に新刊を配本している会社です。図書館に納入する図書の8割の納入実績があるとも言われています。イーハトーヴ書店の運営母体のイー・ピックス社はTRCに口座を持っており、TRCを通して全国の図書館に販売する事ができます。(実際の納入数は、本の内容によりTRCが決定するため、より魅力的な本を作ることが大切になります)
(注2)ここでは「手元保管分」として、20冊にしていますが、3と4の取次業者からは返本が予想されますので、ここではそれぞれ50冊返本され、最終的に著作者の手元に戻ります。したがって、手元保管分は最終的に120冊となります。(この分は、いわてイーハトーヴ書店で根気よく販売が可能です)
Bプラン <売価が税込み1,944円の時>
販売ルート | 販売冊数 | 単価 | 掛け率 | 売上金額 |
1,個人での販売 | 350冊 | 1,944円 | 1.00 | 680,400円 |
2,イーハトーヴ書店での販売 | 50冊 | 1,944円 | 0.80 | 77,760円 |
3,県内の取次へ委託(配本300冊) | 200冊 | 1,944円 | 0.55 | 213,840円 |
4,全国の取次へ委託(配本200冊) | 150冊 | 1,944円 | 0.60 | 174,960円 |
5,図書館流通センター | 50冊 | 1,944円 | 0.58 | 56,376円 |
6,手元保管分(注1) | 20冊 | 0円 | 0円 | |
7,献本分 | 30冊 | 0円 | 0円 | |
合 計 | 800冊 | 1,203,336円 |
(注1)ここでは「手元保管分・在庫」として、170冊にしていますが、20冊は著作者が自分の保管分。残りの150冊は、実際には県内の出版取次と全国の出版取次に多めに配本し、返本を見越した分です。
Cプラン <売価が税込み2,160円の時>
販売ルート | 販売冊数 | 単価 | 掛け率 | 売上金額 |
1,個人での販売 | 300冊 | 2,160円 | 1.00 | 648,000円 |
2,イーハトーヴ書店での販売 | 50冊 | 2,160円 | 0.80 | 86,400円 |
3,県内の取次へ委託(配本300冊) | 200冊 | 2,160円 | 0.55 | 237,600円 |
4,全国の取次へ委託(配本250冊) | 150冊 | 2,160円 | 0.60 | 194,400円 |
5,図書館流通センター | 50冊 | 2,160円 | 0.58 | 62,640円 |
6,手元保管分(注1) | 20冊 | 0円 | 0円 | |
7,献本分 | 30冊 | 0円 | 0円 | |
合 計 | 750冊 | 1,229,040円 |
(注1)ここでは「手元保管分・在庫」として、220冊にしていますが、20冊は著作者が自分の保管分。残りの200冊は、実際には県内の出版取次と全国の出版取次に多めに配本し、返本を見越した分です。
自費出版の場合には、著作者の人脈や販売力が基本
上記の3つのパターンは、
1,定価を、1,620円・1,944円・2,160円の3通り
2,著作者個人の販売数を、400冊・350冊・300冊の3通り
で試算したものです。
※手元保管分・在庫の冊数も変わっていますが、これは注記でも説明しているように、実際には県内取次と全国取次に多めに配本し、売れ残って返本になった数です。
自費出版であれ企画出版であれ販売数は水もので、予測はつきませんので著作者の人脈や販売力が最も大切になります。
ですから、著作者が手堅く販売できる数を基本に考え、それに販売単価を掛けた金額をベースに考えるべきです。
そのように考えると、本の販売単価も自ずと考え方が固まってきます。
著作者の知人や・友人が見込み客の大半だと考えると、その人達にいくらであれば買ってもらいやすいか、という観点で考えてみましょう。
この本の場合には、当初、著作者は税別1,800円(税込み1,944)を考えていました。
しかし、税別1,800円の本を買ってくれる友人達であれば、税別2,000円でも買ってくれるに違いないと考え、パターンCも考えてみたのですが、税別2,000円という金額は税込みだと2,160円になり、実際に本を売ってお金の授受をするときに釣り銭が面倒になります。かといって160円は切り捨てるには大きな金額で、安売りの感が出てしまいます。
そこで結果的には定価を税別1,900円(税込み2,052円)に決定しました。これなら、実際の販売の時は52円を切り捨てて値引きして売ると、販売しやすいからです。
このように定価を決めて、著作者自身の販売数も手堅く300冊で計算してみました。
以下が最終的な販売のシミュレーションです。
最終プラン <売価が税込み2,052円の時>
販売ルート | 販売冊数 | 単価 | 掛け率 | 売上金額 |
1,個人での販売 | 300冊 | 2,052円 | 1.00 | 615,600円 |
2,イーハトーヴ書店での販売 | 50冊 | 2,052円 | 0.80 | 82,080円 |
3,県内の取次へ委託(配本300冊) | 200冊 | 2,052円 | 0.55 | 225,720円 |
4,全国の取次へ委託(配本250冊) | 150冊 | 2,052円 | 0.60 | 184,680円 |
5,図書館流通センター | 50冊 | 2,052円 | 0.58 | 62,640円 |
6,手元保管分・在庫(注1) | 20冊 | 0円 | 0円 | |
7,献本分 | 30冊 | 0円 | 0円 | |
合 計 | 750冊 | 1,229,040円 |
このように最終プランでは、著作者の販売冊数を300冊、売上金額を615,600円と見込み、
その他の売上も無理のない冊数で計算し、合計で123万円の売上の計画にしました。
かかった経費にはわずかに足りませんが、ほとんど回収できる計算です。そしてこの計算では最終的に220冊(750冊から献本分の30冊を引いた数)の本が手元に残る計算になります。
これは販売率が78%ですが、出版事業としては十分な販売率になります。
残った本のうち20冊は子や孫のための永久保存版として保存しておき、残りの本はいわてイーハトーヴ書店でコツコツと売ったり、名刺代わりに知己を得た人に差し上げたりと、有効に使えばいいわけです。
※この記事は2018年8月19日現在書きかけです